ビカクシーダのテリーヌ。~前葉体ジュレを添えて~39日目プラティケリウム・コロナリウム(Platycerium coronarium)

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ビカクシダ胞子培養39日目

寒天培地は実験室、ピートバンは森になってきた

5月22日に播種して、

39日目。

ビカクシダの胞子培養です。

最初はほぼ粉。

見えない。

蒔いたのかも分からない。

息をしたら飛ぶ。

植物というより、植物になる予定の微粒子。

そんな状態から始まった胞子培養ですが、39日目になってかなり変化が見えてきました。

結論から言うと、

かなり成功寄りに見えます。

もちろん、まだ油断はできません。

ここはまだ「ビカクシダの子株が出た!」という段階ではありません。

まだシダの配偶体段階。

人間でいうと、まだ履歴書を書き始めたくらいです。

内定はまだ先。

でも、かなり良い流れに見えます。

寒天培地、角が立ってきた

まず寒天培地。

こちらはどんどん角が立ってきました。

見ていて面白いのは、茶色い胞子殻の周囲から、透明〜黄緑の細い組織が伸びているところ。

緑の点も増えています。

しかも、寒天表面で腐って溶けているような感じではなく、芽っぽく立ち上がっている部分があります。

これがかなりうれしい。

白カビの綿毛状コロニーも、全体として目立っていません。

この時点で、瓶の前でだいぶニヤニヤします。

完全に怪しい人です。

でも胞子培養をしている人間は、たぶん全員こうなります。

今どの段階っぽいのか

今の状態は、おそらく、

胞子発芽

糸状に伸びる初期段階

初期前葉体〜前葉体形成の入口

くらいに見えます。

まだ「ビカクシダの赤ちゃん株」ではありません。

ここ、大事です。

シダは種子植物と違って、いきなり親と同じ形の芽が出るわけではありません。

胞子からまず出てくるのは、前葉体という配偶体です。

つまり、今見えている緑の小さな世界は、将来のビカクシダ本体そのものというより、その前段階。

ゲームでいうと、まだキャラメイク画面です。

でもキャラメイクに入っただけでかなりうれしい。

ここからうまく進むと、緑の点が少しずつ面になり、薄いハート形〜不定形の前葉体に広がっていくはずです。

寒天培地の良いところ

寒天培地の良いところは、とにかく観察しやすいこと。

発芽の初期が見える。

汚染も分かりやすい。

小さい変化を追いやすい。

透明な舞台の上で、胞子がどう動いているか見える感じです。

植物培養というより、理科の観察。

いや、変態観測。

茶色い胞子殻の周囲から透明〜黄緑の組織が伸びているのを見つけた時の喜びは、なかなか伝わりにくいと思います。

普通の人から見れば、

「緑の点?」

で終わりです。

でもこちらからすると、

「違うんです。これはただの点ではないんです。」

になります。

植物好きは、点に意味を見出す生き物です。

ピートバンもかなり良い

そしてピートバン。

こちらもかなり良い感じです。

寒天培地が「実験室」なら、ピートバンは「森」になってきました。

画像由来の観察ですが、単なる藻だけではなく、ビカクシダの前葉体っぽいものがかなり出ているように見えます。

特に分かりやすいのは、緑の粒がベタッとした膜ではなく、

小さい平たい葉状のかけら

丸〜ハート形に近い形

基質に張り付いた薄い緑の板状組織

のように見えるところ。

これはかなり前葉体寄りに見えます。

ただ緑色になっただけではなく、形が出てきている。

ここが大事です。

藻ならもっとベタッと広がることが多いですが、今回は小さな板状の組織がぽつぽつ出ているように見えます。

もちろん、まだ断定はしません。

胞子培養は「これはビカクです!」と言い切った瞬間に、藻だったりコケだったりする可能性があります。

植物界は油断するとすぐ別人が出てきます。

寒天培地とピートバンの違い

今回かなり面白いのが、寒天培地とピートバンの違いです。

寒天培地は、初期の観察に強いです。

胞子が割れたか。

細い組織が伸びたか。

緑の点が出たか。

カビが出ていないか。

そういう細かい変化が見やすい。

一方でピートバンは、前葉体が面で広がりやすい印象です。

寒天よりも基質感があり、湿度も保ちやすく、栄養や微細な凹凸があるせいか、前葉体が“育つ場所”としては良さそうに見えます。

寒天は観察用。

ピートバンは育成用。

今のところ、そんな印象です。

寒天培地は透明な実験台。

ピートバンは発芽後の幼稚園。

そして今、ピートバンの方は幼稚園どころか、少し森化してきています。

ピートバンの方が成長が早そう

今回見ている限り、ピートバンの方が成長が早いように感じます。

おそらく、寒天培地よりもピートバンの方が栄養や微生物環境、表面構造の面で育ちやすいのかもしれません。

ただし、これはあくまで今回の環境での印象です。

寒天培地はクリーンに管理しやすい反面、栄養設計や表面環境によっては成長がゆっくりになる可能性があります。

ピートバンは育ちやすい反面、藻、コケ、雑菌との見分けが難しい。

ここが悩ましいところです。

育つ。

でも混ざる。

見える。

でも遅い。

どちらも一長一短です。

植物趣味は、だいたいこうです。

楽な方法はありません。

あるのは、面白い方法だけです。

今後の管理で気をつけたいこと

ここから大事なのは、焦らないこと。

緑が見えてくると、つい何かしたくなります。

開けて見たい。

触りたい。

霧吹きしたい。

移植したい。

写真を撮りたい。

でも、今はまだかなり繊細な段階です。

急に乾かさない。

強い光に当てすぎない。

蒸らしすぎない。

カビが出ていないか見る。

結露が多すぎる場合は少しだけ様子を見る。

基本は、環境を大きく変えずに見守る時期だと思っています。

胞子培養で一番難しいのは、たぶん管理技術よりも人間側の我慢です。

植物より先に、人間の自制心が試されます。

まだビカクシダではない。でもかなり楽しい

繰り返しますが、今見えているものはまだビカクシダの子株ではありません。

まだ前葉体の段階です。

ここから受精し、小さな胞子体が出て、ようやくビカクシダらしい姿に進んでいきます。

つまり今は、

「胞子から何かが始まった」

段階。

でもこの段階がかなり楽しい。

種子植物の発芽とは違う面白さがあります。

種子は根が出て芽が出て、比較的分かりやすい。

シダは、まず配偶体。

前葉体。

そこから受精。

そして胞子体。

回り道がすごい。

でもその回り道が面白い。

植物の生活史を、瓶の中で見ている感じです。

まとめ

5月22日に播種したビカクシダ胞子培養。

39日目。

寒天培地では、茶色い胞子殻の周囲から透明〜黄緑の組織が伸び、緑の点も増えてきました。

腐敗や白カビが目立つ感じではなく、初期前葉体〜前葉体形成に入ってきているように見えます。

一方、ピートバンでは緑の広がりがさらに進み、小さな葉状・板状の前葉体っぽいものがかなり出てきました。

寒天培地は初期観察に強い。

ピートバンは育ってくると森化しやすい。

今回の比較では、ピートバンの方が成長が早そうに見えます。

まだビカクシダの子株ではありません。

でもかなり良い流れです。

胞子培養39日目。

粉だったものが、緑の点になり、板になり、森の入口に立ち始めました。

そして今日もまた、瓶とピートバンを覗き込みながら思います。

これは植物栽培なのか。

理科実験なのか。

それとも、ただの変態観測なのか。

たぶん全部です。🌱🔬

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