90粒の小さな未来と、数える人間の自我
今年2度目の採種です。
恵比寿笑い。
パキポディウムの中でも、名前の時点で縁起が良すぎる植物です。
「恵比寿」
「笑い」
もうこれだけで福が来そう。
ただし実際に育てている人間は、だいたい種を数えながら真顔です。
福どころか、
「何粒ある?」
「誰に渡す?」
「自分用は何粒残す?」
「鮮度が落ちる前に播かなきゃ」
と、完全に種子会計士になります。
今回の鞘は大きめ


今回の鞘は大きめ
今回の鞘は、前回より少し大きめ。
見た感じでは、
「これは100粒前後いけるのでは?」


また数える。
指にくっつく。
飛びそうになる。
息を止める。
植物好きが種を数える姿は、たぶん外から見るとかなり怪しいです。
そして結果。
ちょうど90粒。
100粒ではありませんでした。
でも90粒。
十分すぎます。
恵比寿笑いの未来が90個。
言い換えると、
小さな福袋が90袋です。
採種はタイミング勝負
恵比寿笑いに限らず、鞘ものの採種はタイミングが大事です。
早すぎると未熟。
遅すぎると飛ぶ。
この「飛ぶ」が怖い。
せっかく育った種が、ある日突然、
「それでは世界へ旅立ちます」
みたいな顔で散っていくことがあります。
こちらとしては、
「ちょっと待って。まだ名簿作ってない。」
です。
なので、鞘が膨らんできたら観察頻度が上がります。
朝見る。
昼見る。
夕方見る。
夜も見る。
もはや監視です。
植物を愛していると言えば聞こえは良いですが、実態は鞘ストーカーです。
自家採種の強み
自家採種の良いところは、鮮度が分かることです。
いつ採れたか。
どの株から採れたか。
どういう環境で実ったか。
これが分かるのは大きいです。
購入種子が悪いという話ではありません。
ただ、自家採種は履歴が見える。
これはかなり安心材料になります。
特にパキポディウム系は、個人的には新鮮な種の方が動きが良い印象があります。
もちろん、保存状態や個体差もあるので絶対ではありません。
でも、
「採れたてを、鮮度が良いうちに播く」
これはやはり強い。
種にとっても、
「まだやる気が残っているうちにスタート」
みたいな感じかもしれません。
人間もそうです。
買ったばかりの参考書はやる気があります。
一週間後にはインテリアです。
プレゼント分と自分用
今回の90粒。
まずは、いつもお世話になっている
やっちんさん
ようへいさん
へのプレゼント分。


いつもありがとうございます。
植物趣味は一人で楽しむのも良いですが、こうやって種や情報が循環していくのが本当に楽しいところです。
種を渡すということは、
ただ物を渡すだけではありません。
「この先の数年分のワクワク」を渡すようなものです。
うまく発芽すれば、
発芽した!
膨らんできた!
冬越えした!
花が咲いた!
種が採れた!
という未来が続いていきます。
つまり、種は小さいですが、時間を含んでいます。
かなりロマンがあります。
ただし同時に、置き場所問題も含んでいます。
ここは見なかったことにします。
自分用も播種
もちろん自分用も確保。




鮮度が良いうちに播種します。
ここで大事なのは、あまり欲張りすぎないこと。
……と言いたいところですが、植物好きはだいたい欲張ります。
「全部播いたらどうなるかな」
「でも全部発芽したら置き場所が」
「いや、全部は発芽しないかもしれない」
「でも発芽率良かったら?」
この会議が脳内で始まります。
そして最終的に、
「まあ、なんとかなるか」
で播きます。
なんとかならないこともあります。
でも播きます。
植物好きの辞書に、学習という文字はあるようで、たまに消えます。
5月初発組は順調
うれしいことに、5月初発組は順調に育っています。
小さいながらも、しっかり生きています。
実生の良さはここです。
最初は本当に小さい。
頼りない。
吹けば飛びそう。
でも、ちゃんと育っていく。
ほんの少し太っただけでうれしい。


葉が出ただけでうれしい。
根が動いていそうなだけでうれしい。
植物を育てていない人からすると、
「どこが変わったの?」
という世界です。
でも育てている本人には分かります。
昨日より良い。
先週より強い。
たぶん。
おそらく。
きっと。
この“たぶん成長している”を楽しめるようになると、実生沼の入り口です。
去年組は少しおとなしい
一方で、去年組は少しおとなしいです。
こういうところも実生の面白さ。
同じように見えても、全員同じペースでは育ちません。


早い株もいれば、ゆっくりな株もいます。
ぐいぐい行くタイプ。
慎重派。
寝ているのか考えているのか分からないタイプ。
植物にも個性があります。
特に塊根系は、地上部だけを見て焦ると失敗しがちです。
見えていないところで根を作っているかもしれません。
内部で準備しているかもしれません。
人間側が焦って水を増やしすぎたり、肥料で押したりすると、逆に調子を崩すこともあります。
おとなしい時は、おとなしいなりに観察。
動かないからといって、すぐに失敗とは限りません。
植物は沈黙が長いです。
でも、急に動きます。
そこが怖くて、面白い。
恵比寿笑いの実生は未来を育てる遊び
恵比寿笑いは、完成株の姿も魅力的です。
丸くて、低くて、どこか不思議で、名前通り少し縁起物のような雰囲気があります。
でも実生から育てると、そこに時間の楽しみが加わります。
今日播いた種が、来年には小さな苗になり、
数年後には少しずつ塊根らしくなり、
いつか花を咲かせ、
また種をつけるかもしれない。
そう考えると、90粒という数字が急に重くなります。
ただの90粒ではありません。
90通りの未来です。
もちろん全部が育つわけではありません。
発芽しない種もある。
途中で弱る株もある。
季節でつまずくこともある。
それでも、播かなければ何も始まりません。
植物趣味において、種まきは未来への予約投稿です。
まとめ
今年2度目の恵比寿笑い採種。
今回は大きめの鞘から、ちょうど90粒。
100粒までは届きませんでしたが、十分すぎる収穫です。
一部は、いつもお世話になっているやっちんさんとようへいさんへ。
残りは自分用として、鮮度が良いうちに播種します。
5月初発組は順調。
去年組は少しおとなしい。
それぞれのペースで育っています。
種を採って、数えて、分けて、播く。
やっていることは地味です。
でもその地味な作業の中に、数年先の楽しみが詰まっています。
今日の90粒が、
いつか90個の恵比寿笑いになるかもしれない。
……いや、90個になったら置き場所が終わります。
でも見たい。
ちょっと見たい。
かなり見たい。
植物好きはいつも、
「増えたら困る」と言いながら、
「増えたらうれしい」と思っています。
矛盾しています。
でも仕方ありません。
それが実生沼です。
今年もまた、小さな福袋を播いていきます。🌱
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