士童(フライレア・アステロイデス frailea asteroides)の播種

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金成コーデックスさんの種子が届いたので、播いてみた話

@kannaricaudex さんのところの士童の種子が到着しました。

冬型に興味を持つと一度はたどり着くサイト。

金成コーデックス|CAUDEXを種から育てよう

を運営されている方の種子です。

冬型植物の栽培記録や播種記録を調べていると、

「あ、このサイト見たことある」

となる方も多いと思います。

ただし今回購入したのは冬型ではありません。

士童。

サボテンです。

どちらかというと夏型です。

冬型に興味を持ってたどり着いたサイトで、夏型を買う。

何もおかしくありません。

植物趣味ではよくあることです。

アガベを見に行ってハオルチアを買う。

用土を買いに行って種を買う。

鉢を買うつもりが、なぜか植物も増える。

日常です。

大事なのは、

信用できるところから購入できること。

種子は見た目だけでは、鮮度や管理状態が分かりにくいものです。

だからこそ、信頼できる方から購入できる安心感は大きいです。

到着した時点で、もうワクワクしかありません。

富士山フェスタでも購入した士童

実は士童。

富士山フェスタでも購入していました。

その時から、ずっと気になっていた植物です。

小さい。

地味。

でも妙に存在感がある。

大輪の花で殴ってくるタイプではありません。

強烈な刺で威圧してくるタイプでもありません。

でも、なぜか目が行く。

こういう植物が一番危険です。

派手な植物は、危険が分かりやすい。

地味な植物は、気づいた時には沼です。

士童は完全に後者です。

地味なのに、気になる。

小さいのに、妙に強い。

植物棚の端にいても、

「お前、何者なんだ」

とこちらに考えさせてくるタイプです。

再度、士童とは

まず名前です。

士童。

この名前を見ると、一瞬そっちへ行きます。

歌舞伎の名門に生まれ、

古典歌舞伎から映画、ドラマまで……

いや、そっちの獅童ではありません。

今回の士童はサボテンです。

ただし、名前の響きが強い。

士童。

短い。

渋い。

硬い。

植物名というより、主人公のライバルです。

しかも見た目も、どこか硬質。

鮮やかな緑というより、茶色、暗緑、栗色、赤錆びたような色味を見せることがあります。

かわいいというより、

渋い。

小さいのに、なんとなく鉄分を感じる見た目です。

もちろん実際に鉄の塊ではありません。

サボテンです。

でも、雰囲気としてはちょっと硬い。

名前も硬い。

見た目も硬い。

この時点で、すでに少しだけ不思議な方向へ進み始めています。

名前の整理

歌舞伎の中村さんのほうではありません。

流通ではよく、

Frailea asteroides

Frailea asterioides

フライレア・アステロイデス

士童

として見かけます。

ただし分類上は少しややこしく、現在は Frailea castanea として扱うのが堅そうです。

園芸的には、

受理名:Frailea castanea
旧名・流通名:Frailea asterioides / asteroides
和名・園芸名:士童

くらいに整理しておくと分かりやすいと思います。

植物名は本当にややこしいです。

本名。

旧名。

流通名。

園芸名。

履歴書が何枚もあります。

人間なら、自己紹介だけで面接時間の半分を使うタイプです。

castanea という名前も良い

受理名の castanea は、栗色や栗に関係する言葉です。

これがまた士童に合います。

士童の肌は、明るい緑というより、

茶色。

暗緑。

栗色。

赤錆びたような色。

派手ではありません。

でも渋い。

乾いた土の上に転がる、小さな栗。

あるいは、少し赤錆びた金属片。

そんな雰囲気があります。

この「栗色」「赤錆び感」が、士童の見た目の面白さだと思います。

小さいのに、妙に味がある。

若いのに、すでに古参の顔をしている。

サボテン界の渋い若手です。

士童最大のうんちく

士童の一番面白いところ。

それは、

花が開かなくても種ができることです。

フライレア属は、閉鎖花・閉花受粉をすることで知られています。

英語では cleistogamy。

花が開かないつぼみの中で自家受粉し、そのまま種を作ることがあります。

つまり士童では、

「花が咲いた!」

より先に、

「あれ? つぼみだったはずなのに種鞘になってる……」

が起きます。

なにその密室事件。

人間側は見ていない。

虫も来ていない。

花も開いていない。

でも種はできている。

士童、仕事が早い。

そして見せ場を省略しがち。

花を見せてくれない理由

士童の花は黄色系ですが、開花を見るのは意外と難しいです。

理由は単純で、開かなくても種が作れてしまうからです。

もちろん、条件が合えば花を開くこともあります。

暖かい。

よく晴れている。

株の状態が良い。

つぼみが開花タイプに進む。

そして人間の観察タイミングが合う。

この条件が揃った時、やっと黄色い花を見せてくれることがあります。

逆に、

曇り。

低温。

光不足。

株が小さい。

体力を温存したい。

そんな時は、開かずに中で自家受粉してしまうことがあります。

つまり、

「今日は咲きません。でも種は作ります。」

という植物です。

ファンサービスは少なめ。

繁殖への意志は強め。

小さいのに、したたか。

こういうところが士童の面白いところです。

閉鎖花は合理的

閉鎖花は、植物にとってかなり合理的な戦略です。

虫を待たなくていい。

花を大きく開くエネルギーを節約できる。

雨や曇りでも種を作れる。

小さな株でも子孫を残せる。

小型サボテンにとっては、かなり相性の良い方法だと思います。

派手に咲く美しさも良い。

でも、咲かずに実る不思議さも良い。

士童の魅力はまさにそこです。

地味だけど戦略的。

小さいけれど合理的。

花を見せないけれど、ちゃんと次世代を作る。

サボテン界の省エネ戦略家です。

いよいよ播種

ということで、士童への理解も少し深まったところで播種です。

今回はいつもの流れ。

ベンレートT+メネデールの希釈液に一晩浸漬。

濃度はだいたい2000〜4000倍くらいを意識しています。

そして翌朝。

種を見て、少し笑いました。

ぷっくりしている。

赤黒い。

乾いていた時よりも水を吸って、丸みが出ています。

なんというか、

血豆っぽい。

サボテンの種を見て血豆を連想する日が来るとは思いませんでした。

でも本当にそんな雰囲気でした。

赤黒くふくらんだ小さな粒。

その中に、これから動き出す命が詰まっている。

植物なのに、少し生々しい。

さっきまで「栗色」「赤錆び」なんて言っていたせいもあり、余計にそんな印象になりました。

もちろん種です。

血豆ではありません。

サボテンです。

でも、見れば見るほど少しそれっぽい。

実生趣味は、たまに人間の連想力を変な方向へ育てます。

播種後はクリアファイル

浸漬後、播種しました。(ラベルミス)

士童の種は小さいです。

発芽苗も小さいです。

なので、扱いは慎重に。

覆土はごく控えめ。

湿度を保つために、クリアファイルをかぶせて発芽を待ちます。

クリアファイルは本当に便利です。

保湿できる。

中が見える。

加工しやすい。

安い。

園芸資材界の名脇役です。

おしゃれではありません。

でも使える。

植物趣味は、こういう地味な道具に支えられています。

6月24日、播種4日目

そして6月24日。

播種から4日目。

発芽が始まりました。

早い。

一晩ふやかしてぷっくりした、あの赤黒い種。

血豆みたいだと思っていた粒から、白い根が出始めています。

この瞬間が実生の面白いところです。

昨日までただの粒だったものが、

急に生き物になる。

赤黒い種皮がゆるみ、

中から白い根が出る。

小さい。

本当に小さい。

でも確実に動いている。

この「出た!」の瞬間だけで、実生はやめられません。

種から根が出る。

ただそれだけ。

でもこちらのテンションは爆上がりです。

発芽後が本番

ただし、発芽したら勝ちではありません。

むしろここからが本番です。

士童の発芽苗はとても小さい。

乾かしすぎない。

強光に当てすぎない。

蒸らしすぎない。

カビに注意する。

小さい苗は、少しの環境変化で一気に傾きます。

発芽はゴールではなく、予選通過。

本大会はこれからです。

特に小型サボテンの実生は、

「順調そう」

と思った直後に崩れることがあります。

油断は禁物。

でも心配しすぎて触りすぎるのも禁物。

植物相手の難しいところです。

見守る。

でも放置しすぎない。

手を出す。

でも出しすぎない。

完全に距離感の問題です。

士童の面白さ

士童は派手なサボテンではありません。

大きくもない。

刺が強烈なわけでもない。

花もなかなか見せてくれない。

でも面白い。

小さな体で、花を開かずに種を作る。

小さな株で、世代を回していく。

咲く美しさではなく、咲かずに実る不思議さ。

ここが士童の沼です。

そして今回、種から育てることで、その面白さがさらに深まりました。

株を買うのも楽しい。

でも種から始めると、別の楽しみがあります。

赤黒い小さな粒が、

水を吸い、

ふくらみ、

根を出し、

やがて小さな士童になる。

この過程を見られるのが実生の魅力です。

まとめ

@kannaricaudex さんのところから、士童の種子が届きました。

冬型植物を調べていると一度はたどり着く金成コーデックスさん。

そこで購入したのは夏型寄りの士童。

でもいいんです。

信用できるところから買える種子は、それだけでワクワクします。

富士山フェスタで株を買って以来、気になっていた士童。

そこに種子販売のお知らせ。

これは買うしかありませんでした。

一晩浸漬した種は、ぷっくり赤黒くなり、どこか血豆のよう。

そして播種4日目には、種皮が外れ、白い根が出始めました。

士童は、現在 Frailea castanea として扱うのが堅そうですが、園芸では Frailea asterioides や士童の名前でよく流通しています。

そして最大の魅力は閉鎖花。

花を開かず、つぼみの中で自家受粉し、種を作ることがある小型サボテン。

咲く前に実る。

見せる前に終わっている。

小さいのに、したたか。

そして今回、

士童の硬い名前。

栗色や赤錆びを思わせる肌。

一晩ふやけた赤黒い種。

血豆みたいな粒から出る白い根。

その連想が、最後になぜかこうつながりました。

士童

中村獅童さん

ピンポン(松本大洋

サポート材が指に刺る。僕の血は、鉄の味がする。(今ここ)

たぶんこれは、

発芽を見た人間のテンションと、

実生沼に入った人間の血の味です。

あと、プライムデーも近いので👇から購入していただけるとありがたいです!!

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