春先に南アから購入した
ドロサンテマム・グロボーサムの種子
涼しくなったので撒いていきます


種は合計20粒


播種の前に調査
小さな丸い葉を、枝いっぱいにつけるドロサンテマム・グロボーサム。
学名は Drosanthemum globosum L.Bolus。南アフリカ原産の、ハマミズナ科の多肉植物です。
粒を並べたような姿を見ると、つい葉ばかり眺めてしまいます。でも調べてみると、名前の由来から種子の移動方法まで、なかなか面白い話がありました。
かわいいだけで終わらせるには、ちょっと惜しい植物です。
名前の由来は「露の花」と「球形」
ドロサンテマムは、表面のきらめきから
属名の Drosanthemum は、ギリシャ語の drosos=露、anthos=花に由来します。
名前のもとになったのは、この属の植物に見られる、露のようにきらめく表面の突起。グロボーサムの葉にも「乳頭状突起が密生する」と植物誌に記載されています。
丸い葉をよく見ると、その表面にはさらに細かな凹凸がある。
粒を楽しんでいたら、その粒にも見どころがあったというわけです。接写を始めると、なかなか先に進めません。
グロボーサムは「球形の」という意味
種小名の globosum は、ラテン語で「球形の」という意味です。
植物誌にも球形の葉が記載されているので、姿とよく似合う名前ですね。ただし、命名者が葉を指してこの名前をつけたのか、その意図を明記した原記載本文は今回確認できませんでした。言葉の意味と、命名の詳しい経緯は分けておきます。
ちなみに、この学名が公表されたのは1930年5月9日。最近知った植物でも、名前の歴史はもうすぐ100年です。
小粒の葉をつけるけれど、本体は低木
枝を伸ばし、高さ45cmになることも
グロボーサムは、直立してよく枝分かれする小低木です。南アフリカ国立生物多様性研究所〈SANBI〉の植物誌では、高さは最大約45cm、球形の葉は厚さ最大約3mmとされています。
小鉢の中で粒々している姿からすると、45cmは意外と立派。
ずっと同じ場所で小さくまとまっている植物というより、枝を伸ばしながら樹形をつくる植物として見ると、成長の楽しみ方も変わってきます。
葉が外れやすいことも、正式に記載されている
同じ植物誌には、葉が容易に外れることも書かれています。
扱うときに気を使う性質まで、しっかり記録されているんですね。かわいい粒ですが、取り扱いは少々繊細です。
ただし、落葉をすべて正常と判断できるわけではありません。また、落ちた葉から葉挿しできるかどうかは、今回確認できた一次資料では不明です。
「落ちるなら増えるだろう」と期待したくなりますが、そこは別問題。植物側から、増殖用パーツですという説明書は出ていません。
自生地は南アフリカ。冬に花を咲かせる記録がある
植物誌では、分布を南アフリカのLaingsburgからMontagu、Prince Albertにかけてとし、生育する土壌をローム質と記載しています。
多肉植物だからといって、自生地が必ず粗い砂利だけとは限らない。用土を考えるときにも面白い情報です。
ただし、現地の土質がわかったからといって、そのまま日本の鉢へ再現すればよいという話ではありません。雨の降り方や乾き方まで含めて考える必要があります。
花はマゼンタ色で、直径は最大約17mm。現地の開花期は6〜7月と記録されています。南半球なので、冬に当たる時期です。
ここから「日本でも6月に咲く」「冬型だから夏は完全断水」と一気に話を進めることはできません。開花の記録と、栽培下での生育・休眠の条件は別に確認したいところです。
自家受粉する? 1株で種が採れる?
ここは気になるところですが、今回確認できた一次資料では、グロボーサムの自家和合性はわかりませんでした。
整理すると、確認したいのは次の3点です。
- 自分の花粉で、発芽可能な種子をつくれるか。
- 人が手伝わなくても、自動的に自家受粉するか。
- 1株だけで、継続的に採種できるか。
似た質問に見えますが、それぞれ別の話です。
花のあとが膨らんでも、それだけで「自家受粉成功」とは言い切れません。種子ができたか、さらにその種子が発芽するかまで確認して、ようやく次の話ができます。
現段階では「1株で採れる」とも「必ず別株が必要」とも断定できません。主要な送粉者についても、この種を対象にした直接の観察資料は今回確認できませんでした。
播種方法は? 庭園の実施記録を参考にする
18〜22℃で、表面に播いて薄く覆う方法
フランスのChâteau Pérouseには、グロボーサムの播種手順と自園の育成履歴が公開されています。
これは最適条件を比較した学術実験ではなく、栽培施設自身の実務記録です。同園が掲載している方法は、次のとおりです。
| 項目 | 掲載されている条件 |
|---|---|
| 播種時期 | 秋 |
| 用土 | 排水のよい播種用土。実施記録には培養土+砂 |
| 播き方 | 用土の表面に播く |
| 覆土 | バーミキュライトを約2mm |
| 温度 | 18〜22℃ |
| 光 | 日光のある条件 |
| 水分 | 発芽中は用土を湿った状態に保つ |
意外なうんちく。家畜の糞から発芽している
今回いちばん面白かったのが、この話です。
Haarmeyerらの2010年の研究では、南アフリカのKnersvlakteで集めたヒツジ・ヤギの糞から、どんな植物が発芽するかを調べています。
その結果表に、Drosanthemum globosumと同定された実生が8個体登場します。
鉢の上では小さな粒をつけたかわいい植物ですが、野外での移動には、家畜が関わる経路も報告されているわけです。なかなか予想外の交通手段。
ただし、この研究は「消化管を通ると発芽率が上がる」「食べられないと発芽しない」と証明したものではありません。播種の前処理として真似する話ではなく、種子散布についての観察結果です。
丸い葉の次は、星形の果実を見てみたい
グロボーサムの果実は、5つの部屋に分かれ、星形に近い形になると記載されています。
丸い葉を楽しみ、花を待ち、その次には星形の果実。ひとつの植物で、見る場所が順番に変わっていきます。
魅力は、葉だけでなく枝ぶりや繁殖器官まで観察できること。一方、葉の外れやすさには気を使いますし、受粉や播種については、まだ確認できない点も残っています。
その不明な部分を、もっともらしい育て方で埋めずにおくことも大切です。
小さな丸い葉を眺めながら、花が咲いた日、受粉した日、種子ができた日、発芽した日を記録する。かわいい一鉢が、少しずつ読み応えのある観察記録になっていきそうです。
参考資料
- SANBI:Drosanthemum globosumの種解説
Klakによる2012・2013年の植物誌の記載を収録。形態の確認に使用。 - SANBI:『Strelitzia 29』(2012年)
印刷ページ279。分布、土壌、開花期の確認に使用。 - Château Pérouse:Drosanthemum globosum
栽培施設自身が公開する播種手順・育成記録。査読論文ではありません。 - Haarmeyerほか(2010):家畜による種子散布の研究
South African Journal of Botany 76: 359–364。糞からの発芽を調べた原著論文。 - IPNI:Drosanthemum globosum
学名の公表日・原記載の書誌情報。原記載本文は今回未確認。 - World Flora Online:Drosanthemum属
属名の語源を確認するための植物誌情報。
と調べたところで播種していきます
極小粒なので、浸漬等はせずに、爪楊枝を湿らせてドリル播種しました。


9日目
4粒発芽が確認できました




このまま観察を続けたいと思います。
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