小さな葉に模様とロマンを詰め込んだ植物。問題はここから溶かさず育てられるか
春にInstagramでお世話になっている方からいただいた種子。
ブルビネ・ロリータ(Bulbine lolita)
大変申し訳ないのですが、どなたからいただいたのか分からなくなってしまいました。
もしこの記事を見て思い当たる方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。
その節はありがとうございました!


さて、このブルビネ・ロリータ。
夏は溶けやすいという話もあるので、涼しくなるのを待っていました。
そして10月17日。
ようやく播種です。
種子は20〜30粒ほど。
ただし、その前に少し調べてみました。
これがまた、なかなか面白い植物でした。
ブルビネ・ロリータとは
学名は Bulbine lolita S.A.Hammer。
ツルボラン科、ブルビネ属の植物です。
「ロリータ」という名前、園芸品種名か愛称かと思ってしまいますが、実は正式な学名です。
命名したのはSteven Allen Hammer。
2006年に正式発表された比較的新しい名前です。
ただし、なぜ lolita という名前になったのかは、今回確認できた資料では分かりませんでした。
名前からして気になる植物ですが、実物もかなり個性的です。
数mmの葉に情報量を詰め込みすぎ
ロリータの特徴は、何といっても小さな葉。
植物誌によると、12〜16枚の葉を密ならせん状に付けるそうです。
葉の長さは最大約3mm。
直径は約4mm。
そして淡い青緑色の葉には、格子状の模様があります。
小さい。
とにかく小さい。
それなのに、らせん状の配置に、丸みのある葉、細かな模様まであります。
数mmの葉に、デザインを詰め込みすぎです。
植物界の超高密度設計。
拡大して観察したくなるタイプですね。
こういう植物は、肉眼では小さな塊に見えても、マクロ撮影すると突然別世界が現れます。
これは育ったら撮影が楽しそうです。
花茎もなかなか個性的
葉だけでも十分面白いのですが、花茎も個性的です。
ロリータは赤褐色の曲がりくねった花茎を伸ばし、黄色い花を咲かせるそうです。
花茎は最大約12cm。
花は12〜20個ほど。
葉は数mmなのに、花茎は十数cm。
普段は小さくまとまっているのに、開花期になると急に存在感を主張してきます。
しかもまっすぐ伸びない。
曲がりくねる。
なかなか癖の強い植物です。
これは花が咲くところまで見てみたい。
もっとも、まだ種子を播く前です。
すでに開花まで妄想しています。
植物趣味ではよくあることです。
自生地は南アフリカの片麻岩の丘
ロリータは南アフリカ、西ケープ州に分布する固有種です。
自生環境として報告されているのは、風化した片麻岩からなる小丘。
南アフリカの小型多肉植物というと、白い石英の粒に囲まれた景色を想像しがちですが、ロリータの自生地には片麻岩が出てきます。
植物によって足元の環境も本当にさまざまです。
ただし、自生地の岩石が分かったからといって、栽培用土の正解が決まるわけではありません。
水分。
温度。
乾燥する速さ。
通気性。
こうした条件の組み合わせが大切です。
特に小型の多肉植物は、湿度管理を間違えるとあっという間に溶けてしまうことがあります。
……実はこれが怖い。
こういう小さい系、私は結構溶かしてしまうのです。
植物が小さいと、失敗もあっという間です。
野生ではかなり厳しい状況
調べていて気になったのが保全状況です。
SANBIの2022年の評価では、ブルビネ・ロリータは**CR(深刻な危機)**に分類されています。
違法採集が大きな脅威になっているそうです。
小さくて珍しくて魅力的。
だからこそ、野生では採集対象になってしまう。
なんとも難しい問題です。
今回はいただいた種子からの実生ですが、こうした植物ほど、由来の明確な栽培繁殖株や種子を大切にしていきたいところです。
せっかくいただいた種子です。
できるだけ無事に育てたいですね。
播種方法を調べてみたものの……
さて、肝心の播種方法です。
今回いろいろ調べましたが、ロリータそのものについて、発芽適温や播種深度などを詳しく検証した資料は見つかりませんでした。
温度は何度がよいのか。
光が必要なのか。
覆土はどの程度がよいのか。
浸漬処理は必要なのか。
残念ながら、分からないことが多いです。
同属の情報は参考になりますが、それがロリータにも当てはまるとは限りません。
つまり、
よく分からないので、自分で播いて観察するしかありません。
こういう時こそ実生記録の出番です。
うまくいけば次の参考になります。
失敗しても、やっぱり次の参考になります。
ただし、失敗した時の種子代と精神的ダメージは戻ってきません。
今回はいただいた種子なので、精神的ダメージの方が大きそうです。
10月17日、播種
ということで10月17日。
20〜30粒ほどを播種しました。


今回も種子が小さいので、浸漬処理はせず、そのまま播種しています。
小さな種子は、浸漬すると回収するのも大変です。
今回は余計な操作を増やさず、播いて発芽を待つことにしました。
夏の暑さを避けて、涼しくなってからのスタートです。
さて、どうなるでしょうか。
10月28日、12日目に発芽確認!
そして10月28日。
播種日を1日目として12日目。
発芽が始まりました!


見えにくいですが、現時点で8粒の発芽を確認しています。
これはうれしい!
小さな種子から、小さな芽。
本当に小さいです。
写真を拡大しないと分かりにくいレベル。
でも、ちゃんと出ています。
播種数が20〜30粒ほどなので、現時点の発芽割合はおおよそ27〜40%。
まだ発芽が始まったばかりなので、今後増える可能性もあります。
ただ、気になることが一つ。
発芽している場所に偏りがあるようです。
同じ容器に播いているのに、出ている場所と出ていない場所があります。
なぜでしょうか。
水分の差なのか。
温度の差なのか。
種子の配置なのか。
偶然なのか。
今のところ理由は分かりません。
問題はここから
さて、発芽してくれたのはうれしいのですが、ここからが問題です。
私はこういう小さな実生を、結構溶かしてしまいます。
発芽までは順調。
小さな緑が出てくる。
うれしい。
毎日観察する。
そして、ある日突然いなくなる。
……あれ?
昨日までいたよね?
ということが何度もあります。
特に小型の多肉植物は、過湿や蒸れ、乾燥の影響を受けやすいことがあります。
ただし、ロリータについて具体的にどの程度の水分管理が適切なのかは、まだ分かりません。
だからこそ、ここから慎重に観察していきたいと思います。
乾かしすぎない。
でも蒸らしすぎない。
急に環境を変えない。
そして人間が余計なことをしない。
最後が一番難しいです。
発芽した小さな芽を見ると、どうしても触りたくなります。
写真を撮りたくなります。
もっと近くで見たくなります。
でも、せっかく出てきた芽です。
まずは無事に育ってもらうことが最優先。
発芽はゴールではなく予選通過。
今回もそれを忘れずに管理していきます。
参考資料
- Kew Plants of the World Online:Bulbine lolita — 学名・分類
- IPNI:Bulbine lolita — 命名者・発表年
- World Flora Online:Bulbine lolita — 葉・花茎・果実の形態
- SANBI:Bulbine lolitaの保全評価 — 2022年の保全状況
- Plantemania:Bulbine lolita — 栽培下での採種情報
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